Microsoft Natural Ergonomic Keyboard 4000
テープライターにとって1番困るのはキーボードの故障だ。とにかくタイピングをする仕事なので,ノートパソコンのキーボードを使っていると必ずキーが壊れる。使い慣れたキーボードでないとタイピングミスが生じるので,キーボードは初めから外づけのものを用意したほうが良い。以下でこのキーボードのメリットとデメリットをあげてみたい。
メリット
1.キーボード全体が体に合わせた立体的な作りになっているので,タイピングをしていても腕が疲れることはない。
2.左右のキーが分かれているので,GとH,F5とF6などの通常近接するキーでもタイプミスをすることがない。
3.機能別キーが二段構えで存在し,キー操作でソフトを起動できる。
4.電卓起動のキーが用意されており,計算するときにマウス操作を必要としない。
5.ズームボタンがあり,マウス操作なしに画面を拡大できる。
6.専用ソフトをインストールして使うキーボードなので,Windowsのパソコンと相性が良い。
デメリット
1.キーボードが通常の1・5倍の大きさがあり,かなり場所を取る。
2.価格が高い。
3.キーボードが独特の形なので,慣れるまでに2万文字以上のタイピング(1週間)を必要とした。
これが私の感想だ。場所を取ることと慣れるまでに多少時間を要することに最初は抵抗があったが,慣れてしまうとこのキーボードはとても使い勝手が良い。1度慣れてしまえば種類の違うキーボードを買わなくても,同じシリーズで何度でも交換できるところも良い。テープライターはとにかくタイピングをする仕事なので,キーボードだけは良いものを使っていたほうが良いと思う。その点で,これはお勧めの商品だ。
2012年2月23日(木) Microsoft Natural Ergonomic Keyboard 4000
2012年2月9日(木) 孫子
この本は,私が最初に読んだ孫子の兵法だ。竹簡本の孫子の兵法13篇が収録されており,現代語訳,書き下し文,用語解説,内容解説の順で記述されている。第1篇の兵は国の大事なりの有名な一節から始まり,将軍の心得,農民兵の扱い方,戦略,戦術と兵法が展開され,最終章火攻め篇の最終節で再び戦争が与える経済的損害をよくよく考えて行動しなければならないと締めくくる。本の構成は大きく分けて2つ。前編に孫子の兵法と注釈があり,後編は解説になっている。解説では,孫子の兵法が生まれた春秋時代,孫武のつかえた呉の国の歴史と戦争形態の変遷,わが国での孫子の兵法の扱われた方,世界史的にみる孫子の兵法の扱われ方が述べられ,最後の2章でテキストをめぐる論争など,学問としての孫子の兵法が解説されている。
この本で1番の特徴は1972年に中国で孫子の兵法とは別に孫賓兵法が発見されたことを受け,これまでの孫子の兵法の底本になっていた武経七書本や魏武注孫子ではなく,竹簡本をもとにして書かれている点だろう。近年発見された孫賓兵法や2度の世界大戦における軍事思想などもふまえた解説はきわめて実践的に孫子を読みといており,単なる学問としての孫子を越えて,現場にいきる孫子を学ぶ視点からも魅力的だ。著者の浅野裕一氏は『孫子を読む』という新書も書かれており,第二次世界大戦での日本軍の戦術にも視野を広げた孫子解説を展開されている。また,孫武の誕生から数百年を経て現れた孫子の末裔,孫賓の記した孫賓兵法から,より具体的に孫子の言わんとしているところを解説している点もおもしろい。
この本は私にとって最初の1冊であると同時に読み直しの8冊目にあたる孫子関連本だったので,今回は解説がとりわけ印象深かった。春秋時代,中国には邑(ゆう)と呼ばれる都市国家が点在した。これらの邑では身分階級が定まっており,戦争を行うのは士大夫階級だった。戦場は主に中原(黄河流域)の広い平原で,戦争形態は戦車を使ったものが主流だった。その儀礼的な戦争形態を変えるのが,新興国家の呉である。呉人は漢民族ではなく,揚子江下流域に居住する未開の蛮夷であった。彼らの住んでいる土地は戦車を扱うのに適した土地ではなかったため,軍の主力は歩兵であり,呉王闔閭は各国から優れた軍事顧問を受け入れた。その中にいたのが孫武だ。歩兵を中心とした呉軍と孫子の提案した戦術は広く戦争形態に革命を起こし,呉王闔閭と孫武が国家運営の中心にいた時代,呉は中国でも屈指の武勇をはせた。だが,残念ながら呉王闔閭が死亡してからの呉は衰退してしまい,他国に滅ぼされてしまう。優秀な軍師がいても,天下平定に至らないのが中国史のようだ。
この本は軍事思想を研究されている先生の書かれた本なので,専門用語がたびたび出ており,多少難しい印象を受ける。私は2009年にこの本を読んだが,当時は解説をすべて理解できるほど予備知識がなかったため,書き下し文の音読でストップしてしまった。紆余曲折を経て8冊目として改めて読むと,これまでに蓄積された予備知識をさらに深める結果になって,とてもうれしい。孫子の軍事思想の背景には老子がいる。仁義を説いた儒家とは別に革命思想の原点になった老子の思想が表現の各所ににじみ出ている。諸子百家を生み出した春秋戦国時代には,さまざまな思想家の考えが影響し合っている。1冊読めばすべてを学べるとはいかない点がやっかいだと思うが,そこがさらに学習意欲をかき立てる点でもある。孫子のほかにも,呉子などの武経七書には儒家の教えも強く影響している。私は武経七書以外のものを読んだことがないが,次は仁義を説いた儒家の教えも勉強してみようと思っている。
2012年1月20日(金) 孫子・呉子
BS放送で大河ドラマ・風林火山の再放送をしているとき、この本とめぐりあった。この本は武経七書といわれる中国古典文学7冊と近年になって発見された孫賓兵法を掲載している。最初に武経七書の概略と歴史背景をふまえた解説があり、孫子の兵法と呉子は全編、残りの尉繚子、六韜、三略、司馬法、李衛公問対、孫賓兵法は有名なカ所の抜粋という形になっている。孫子の兵法では戦争を国家の重大事と位置づけ、戦う際のリスク回避の徹底、そして1番良いのは戦わずして目的を達することだということが強調される。呉子では戦争には義が必要なことが強調される。そのほかの5編では仁義を重んじることも大切であるとする。そして近年発見された孫賓兵法では歴史の流れに削られていない生々しい当時の資料をかいま見ることができる。
この本の1番良い点は、書き下し文がとても読みやすいことだ。岩波文庫や講談社学術文庫では書き下し文に不要な漢字表記が多数あるが、この本は極力漢字を排し、平仮名で表記されている。漢文になじみのない人や小難しい本は遠慮したいという人には、徳間文庫の中国の思想・孫子・呉子がお勧めだ。比較的読みやすい本なので、漢文を学び始めた中学生や高校生でも読めるように書かれているところがとても良い。最初に解説と翻訳を読み、何度も書き下し文を音読すれば、漢文の学習にとても役立つ1冊になるだろう。この本で武経七書をしっかり学び、それぞれの兵書について書かれた新書を読み込めば、学校では学べない漢文の魅力にとりつかれること、間違いなしである。
以下で私が印象に残っているところを4カ所ぐらいあげてみたい。まず、孫子の兵法では、兵は国の大事なりの有名な一節だ。孫子は、戦争には目的がなければならず、仮に戦争に勝っても目的を達成できなければなんの意味もないとする。目的を達成するためには、まず戦わずして達成するのがもっともよく、戦わざるをえないときもリスク回避を徹底することを教える。激戦の末勝つのは良くないこと。勝ちやすい状況を作り、簡単に勝ち所期の目的を達成することが良いとする。孫子は政治的な目的を達成する手段として戦争を考え、大事なのは所期の政治目的を達成することであり、戦争に勝つことではないという考え方をしていたのだろう。私が若いときは何事も勝つことが大切だと思っていたが、今なら孫子の教えが良く分かる。
呉子では国家をおさめ、兵を動かすには仁義礼が大切なことを説く。君主が兵士に礼を尽くさなければ、戦争のときも兵は期待するような働きをしないという点を強調する。そして、兵も人間である以上、戦うために正義が必要なことも述べられている。勝ちをむさぼり、戦いを繰り返すような君主では、その国は必ず滅びさるだろう。まず和して、しかる後に大事をなす。正と奇の組み合わせで勝ちを収めた孫子に比べて、呉子はとても堅実な政治家の印象を受ける。国家を収めるにも、戦争に勝つにも、大切なのは仁義礼であるとした呉子の教えは、私にとって、とても新鮮だった。
尉繚子では、命令はやたらに変更するなという教えが新鮮だった。最近孫子ブームで、流動的システムや組織の構築こそが激動する現代を生き抜くすべであるという動きがある。職場で仕事の指示が二転三転することもめずらしくなくなった。だが、これらの動きは武経七書の教えを取り違えているといえる。大切なのは戦略面で敵にさとられないような臨機応変な対応をすることで、決して組織そのものや命令がころころ変わることではない。特に春秋戦国時代に生まれたこれらの兵法では、農民を兵士として使っていた。農民はプロフェッショナルの軍人ではない。将軍の命令が二転三転すれば二心を抱くというのも当然の結果だった。そこで大切なのは、命令は分かりやすいことが1番であり、それは二転三転してはならないということだ。分かりやすい一貫した命令こそが、兵を戦場で迷いなく戦わせるポイントだった。
同じく尉繚子で、「兵は凶器なり、争いは逆徳なり。・・・。故にやむを得ずしてこれを用う」、「天の時は地の利にしかず、地の利は人の和にしかず」という一節がある。軍略の奥義は、戦略や戦術を論じるだけではない。春秋戦国時代の兵家は一軍人であると同時に政治家でもあった。戦争は自国がしっかり収まっていて、初めて成しうる大事である。自国すら収められない主君では、戦争で天下を平定することもできないだろう。軍略の奥義に「争いは逆徳なり」と記されていることはとても印象的だった。平時から徳を収め、民心を集めてこそ、いざというときの争いにも勝てる。これはとても大切なことだ。
今回、武経七書を通して学んだことは、争いを論じた軍略の奥義を修めるには高い徳が必要だということだった。逆徳の人は必ず自滅する。天の時も地の利も人の和にはおよばない。日頃から人と和することの大切さを武経七書から教わった。これらの兵法を学び始めた当初には予想もつかなかった結論を得ることになった。私は争いの絶えない人生に嫌気が差して軍略を学び始めたが、大切なことはどこの世界でも同じだった。人と和することが万が一の争いにも勝つ秘訣なのだ。これを読み終えると同時に徳間文庫の論語も注文したので、次は論語を読んで仁の世界も学んでみたいと思う。みなさんは、私ほど争いの多い人生ではないだろうと思われるが、この本はとてもよい本なので、ぜひ一読されることをお勧めしたい。
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