今回チェスソフトとチェスの教科書を一緒に購入して、一番レベルの低い対戦を楽しんでいる。以前ニュースで将棋の特集がされたことがあり、将棋は戦局を組み立てる力を養うと報道されていた。確かに一理あり、序盤、中盤、終盤という大局を見据えて自分の体制を整えつつ、どのように相手の体制を崩すかを考えていくというのは高度な論理的思考が必要になる。対戦相手はこちらの体制を崩そうと攻めてくるので、こちらは自分の体制を組み立てつつ相手と戦わなければならない。マンガなどで描かれる先読みというのは小局と呼ばれ、こういうボードゲームでは大局、中局、小局の三つを把握する必要がある。ニュースで報道されていた戦局を組み立てる力というのは大局のことである。二手先、三手先が読めても、大局を把握していなければ勝てない。そういう点で、取った駒が使える将棋はチェスよりも戦局を組み立てる力を養うのに向いているような気がする。
チェスゲームのレベル1〜3では、局面の作り方がだいたい決まっている。動かす駒こそ毎回違うが、大局が同じような動き方をする。コンピュータは序盤で無意味な駒を展開させ、中盤から適当に展開させた駒で攻めに入る。終盤ではこちらにほとんど駒を取られて詰まれるという流れである。レベル1〜3で気をつけなければならないのは、中盤でこちらが攻めることに夢中になってしまい、自分のキングを追いつめられるというヘマをしないことである。レベル1〜3と言っても中盤からは一応攻めに入るので、コンピュータの駒を削ることばかりに気が向いているとキングが身動き取れなくなるという事態も起こり得る。中盤ではあくまでキングを守りつつ、相手の駒を削ることを考えなければならない。私の場合は特に窒息メイト、肩章メイト、バックランクメイトに注意する必要がある。
しかし、レベルが低いうちは定石通りに駒を展開させる余裕がある。こちらが盤面中央に駒を展開させようとしているところを、序盤から積極的に崩しにかかるような攻め方はしてこない。教科書に載るようなチェス名人の手になると駒を展開させる間もなく、先方の一駒が奇襲と突撃でこちらの連携やポーンチェーンを崩しにかかる。将棋では一度体制を崩されても、取得した駒で体制を立て直し、戦況を再構築することができるが、チェスでは一度体制を崩されると戦局を立て直すことはできず、投了するしかなくなる。ここがチェスの融通の利かないところであり、難しさでもある。
ここ三日ほどチェスで遊んでいるが、私の場合、序盤の駒の展開はできるようになった。チェスのオープニングゲームでは、盤面中央にいかに自分の駒を展開して、相手の駒の中央進出を封じるかにかかっている。問題はミドルゲームの攻め方である。どのように攻めれば効率的なのか、まだよく分かっていない。そこがよく理解できていないので、ミドルゲームでいきなりチェックメイトされることがある。自分の状況を十分に把握できていない証拠だ。駒を取ることに夢中になって、気がついたら追いつめられていたなんてことがよくある。チェスというゲームは駒を取るゲームではなく、キングを追いつめるゲームだ。ミドルゲームの効率的な攻め方を学ぶ必要がありそうだ。
2012年5月15日(火) チェスソフトで遊んでいる
2012年5月15日(火) はじめてのチェス
アマゾンでそれなりに人気のあるチェスソフトと『完全カラー図解はじめてのチェス』を一緒に購入した。昔のチェスの教科書は棋譜記号ばかり列記されて図面がなかったり、格調を高めるためにわざわざ文語体で書かれていたり、駒の説明で書式が統一されていなかったりして分かりにくかった。だが、2000年以降に出版された本はカラーの図面がついていたり、棋譜記号に頼らず、きちんと一つひとつ分かりやすい図と文章で説明されていたり、駒の動かし方で書式の統一が図られていたりして分かりやすい。この『はじめてのチェス』の良いところは、カラーの図と解説文で戦局が説明されているところや、覚えるべき重要項目は一覧でまとめられているところだ。さらに第一章準備編では、駒の動かし方の説明で書式が統一されているところなど、一般的な業務書類の作り方をきちんと押さえてあるところは高く評価できる。
この本は本当に初心者向けの本で、オープニングゲームの駒の展開の仕方、ミドルゲームでの攻めのテクニック、一般的なメイトの例などが説明されているが、定石についてはあまり詳しく触れられていない。90年代の初心者向け教科書では定石の説明にかなりのページを割いていたが、最近は定石があまり重視されていないのかもしれない。この本ではオープニングゲームの駒展開とエンドゲームの詰めチェスは身につくが、ミドルゲームでの効率的かつ体系的な攻め展開の仕方は身につかないような気がした。オープニングとエンドがあるなら、ミドルゲームでの大局の例も載せてほしかった。
以下で私が印象に残った解説を三カ所ほどあげてみたい。まず、オープニングゲームの組み立て方だ。キングもしくはクイーンの前のポーンを早めに盤面中央に展開させ、ナイト、ビショップの順番に中央展開させる。そうしたら早めにキャスリングを決め、キングの前のポーンは空気を入れることはあっても、むやみに動かしてはいけない。クイーン側のキャスリングを狙うときも、ナイト、ビショップの順番に中央展開させる。理想のオープニングはキングを盤面の端に位置させ、クイーンとルーク二つを真ん中に配置する。これだけで中央に出たほかの駒をかなり効率的に援護できる。だが、クイーンはあまり早く動かしてはいけない。オープニングという局面は駒を中央に布陣させることが最も重要で、同じ駒を二度動かしたり、不必要な手を指すのは良くないこととされる。このオープニングゲームをマスターするだけで、コンピュータにも勝てるようになる。
二つ目は、駒交換とチェックメイトに最低限必要な駒の組み合わせだ。ミドルゲームで攻めに入るとき、敵の駒を取れるのに相手から取り返されるという局面が生じる。これを駒交換と言う。相手から取り返されるとき、駒交換の点数表が頭に入っていると失っても良いかどうかの判断ができる。さらに手駒が少なくなってきたとき、チェックメイトに最低限必要な駒の組み合わせを理解していると、攻めるべきか、逃げるべきかの判断がつくようになる。駒交換とチェックメイトに最低限必要な駒の組み合わせを理解した上でフォーク、ピン、ディスカバーなどのテクニックをうまく使い相手の駒を削っていく。ミドルゲームはエンドゲームにつなげるための大事な局面なので詰めにつながる攻め方をしなければならない。
三つ目は、エンドゲームとさまざまなメイトである。『相棒』の劇場版1で出てきたフールズメイトを始め、肩章メイト、窒息メイトなど、初心者が陥りがちなメイトが紹介されている。詰めチェスは覚えるものではないが、さまざまなメイトは覚えておくと対戦中に自分の駒の配置から危険性を察知できるようになる。私はこの本でフールズメイトが解説されているのが一番うれしかった。今までチェスの教科書をまともに読んだことがなかったので、映画で出てきたチェス用語がずっと分からないままだった。この本を読むと映画も楽しめるという一挙両得した気分だ。
この本はオープニングゲーム、エンドゲーム、ミドルゲームで使えるテクニックという章分けになっていて、やっぱりミドルゲームの定石は載っていない。もしかしたらミドルゲームに定石がないのかもしれないけれども、もう少し詳しく解説してほしかった。だが、オープニングゲームとさまざまなテクニックはとても充実していて、この本を一冊覚えるだけでそれなりに勝てるようになる。私の今後の課題は、ミドルゲームの棋譜をもっと研究すること。チェスは始めたばかりだが、これはこれで結構はまるものだと思う。チェス教科書の最初の一冊としてはとてもお勧めなので、ぜひ皆さんにも読んでほしいと思う。
2012年5月14日(月) トムソーヤーの冒険
洋書のThe Adventures of Tom Sawyerを読もうと取り組んだが、話の内容もほとんど知らず、英語も簡単というわけではなかったので、100ページほど読んで挫折してしまった。そこで日本語訳を読んで再度挑戦しようと思い読んだのが、角川完訳コレクションのトムソーヤーの冒険だった。児童書では仮名づかいが統一されておらず読みにくく、過去の翻訳は直訳っぽい言葉づかいが多く意味がつかみにくかった。それらに比べて、この角川完訳コレクションのトムソーヤーの冒険は出版年が比較的新しいということもあり、とても読みやすい。これを音読学習の一環として全部音読で読んだ。最初は一日一章で35日かけようかと思っていたが、話が進むにつれてトムの冒険がどんどんパワーアップしていき、終盤は一日100ページほど音読して、結局10日ほどで読み終えた。
この本はトムとベッキーのあまずっぱい恋愛を横糸に、ハックルベリー・フィンとの冒険を縦糸に書かれている。前半のトムの海賊ごっこはまだまだ序の口で、中盤からハックフィンと夜遊びをしている最中に殺人現場を目撃してしまい、人殺しのインジャン・ジョーが登場してくる辺りから本格的に冒険の世界へ入る。ハックフィンとの宝探しやベッキーとの洞窟探検など、非常にワクワクドキドキする名シーンだと思う。そしてトムとハックフィンは盗賊の財宝を見つけ大金持ちになるが、読者としては、その後、彼らがどうなったのかがとても気になるところだ。日本ではトムソーヤーの冒険とハックルベリー・フィンの冒険の2冊が有名だが、私としては続・トムソーヤーの冒険があれば読みたいと思った。
私がこの本で印象に残った場面を三つあげるとすると、一つ目は墓荒らしをしに来たお医者さんの先生をインジャン・ジョーが殺害し、それをハックフィンと一緒に目撃してしまう場面だ。インジャンに騙されて酔っ払いのマフ・ポッターが殺人犯にされてしまう一方で、トムとハックフィンがインジャンの復讐を恐れて秘密を守ろうと誓いつつもマフ・ポッターを救出したいという気持ちを強めていく。マフ・ポッターは酒飲みだが、子どもたちの凧を直してあげたりするとてもよいおじいさんだったというのが、この冒険の一番の魅力だろう。町の人から殺人犯としてののしられるが、真実を知るトムとハックフィンはそれを悲しむ。最後に誓いを破って裁判で証言してしまうトムは本当に英雄になる素質がある。私にとって、この話が一番印象的だった。
二つ目は、おばけ屋敷の宝探しだ。子どもらしい空想から何の根拠もない宝探しを始めるトムとハックフィン。たまたま町のおばけ屋敷がむかし盗賊団が根城にしていた建物で、そこに盗賊の財宝が眠っていたなんて瓢箪から駒みたいな話だが、そこがとてもおもしろいと思う。そこで殺人犯のインジャン・ジョーと遭遇し、せっかくの宝を持ち去られてしまうが、トムとハックは彼を追跡して宝物を取り返そうとする。そこからインジャン・ジョーの復讐計画を阻止し、ダグラス夫人を救う。宝を取り戻すという営利活動が、一気にダグラス夫人救出という英雄的行為にまで高まって、トムとハックフィンはまたしても町の英雄になる。英雄になるべくして生まれた少年は、必ず英雄になる運命にあるらしい。しかし、文豪マーク・トウェインの繊細な心理描写が二人の気持ちを細部まで描き出し、読み手を夢中にさせる。
三つ目は、マクドゥーガル洞窟でベッキーと迷子になってしまう場面だ。ベッキーが学校の子どもたちを誘ってみんなでピクニックに来ていた。みんなと一緒にマクドゥーガル洞窟で遊んでいたが、トムとベッキーは洞窟の奥深くまで迷い込んでしまい、みんなとはぐれてしまう。よくよく何日も経ってからトムとベッキーが戻っていないことが分かり、町中大騒ぎになる。これも本当に起こったらどうしようもない事件だが、子どもの視点から描くと大冒険だ。ろうそくもなくなり食べ物も底をついた絶望的な状況で、トムは本当に幸運としか言いようのない方法で出口を発見し、ベッキーを救い出す。また、そこでもインジャン・ジョーと財宝という伏線はきちんと引かれており、最終章へと結びつくようになっている。これが最後まで話をあきさせないマーク・トウェインのすばらしさだと思う。
トムソーヤーの冒険は中学校の英語の教科書で習うが、これを原書で読んでみたいというのが私のここ数年の夢だった。昨年ふしぎの国のアリスと鏡の国のアリスを読み終えたので、今年はトムソーヤーの冒険とハックルベリー・フィンの冒険を原書で読んでみようと思っている。だが、英語の教材としては決して簡単な本ではないので、今回すばらしい日本語訳にめぐりあえてとても良かった。原書では特に口語体で書かれた会話が語学学習者を悩ます点だと思う。だが、マーク・トウェインの作品は英語圏の人たちがもっともよく読む本の一冊なので、がんばって完読したい。
アーカイヴス
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